掲載日:2025年4月1日
以前、県外の病院ではありますが、無痛分娩の際の事故がニュース等でに取り上げられました。そのような情報を目の当たりにされた患者様の中には不安を感じておられる方もいらっしゃると思います。そこでこの場をお借りして、今、無痛分娩のどのようなことが問題になっているかを報告させていただきます。
一般的な無痛分娩は、腰にチューブ(硬膜外カテーテル)を挿入し、そこから麻酔薬を注入し下半身の痛みをとる硬膜外麻酔を利用して行っていますが、硬膜外麻酔時の「非常にまれな合併症」として、硬膜外カテーテルの先端が硬膜を通じてさらに奥にある、くも膜下腔に入ってしまうことが挙げられます。そこに麻酔薬が入ることで、麻酔が上半身まで広がり呼吸が苦しくなったり、足に力が入らなくなったり一時的に意識が遠のいたりする場合があります(高位・全脊髄くも膜下麻酔といいます)。
また、硬膜外カテーテルの先端が血管の中に入ってしまった場合には、舌や唇がしびれたり、ひきつけ(痙攣)をおこしたりすることがあります(局所麻酔薬中毒といいます)。
無痛分娩の際の事故とはまさにこれらに対して適切な対応ができなかったことで起こっています。常にこのような合併症が起きないように万全の注意を払っておりますが、残念ながら、当院でも過去に1件くも膜下腔に誤注入する事故が発生いたしました。
しかし、当院では万が一問題が発生した場合にも十分対応できるよう、安全が確保できる準備を常にしています。この1件も重大な事故に至らず母児ともに元気に退院されました。具体的な安全対策として、産婦さんだけでなく赤ちゃんの安全も守るため常に対話をしながら手技を進めます。腕には血圧計、指にはパルスオキシメーター(体内酸素モニター)、お腹には胎児心拍モニター、陣痛計などを取りつけて様子を見守ります。そして産科医、熟練助産師が適宜診察をさせていただきます。
次に 当院の診療体制ですが、無痛分娩を担当するのは5名の産科医です。日本産科麻酔学会に所属し、厚生労働省のホームページ内 無痛分娩施行施設にも掲載されています。また院内においても、無痛分娩に対する知識を共有するため担当助産師とともに抄読会や危機対応シミュレーションを定期的に開催して研鑽をつんでおります。
最後に、当院の診療実績について情報提供いたします。
全分娩(件) | 非無痛 経膣分娩(件) |
無痛分娩(件) | 帝王切開(件) | |
2019年 | 356 | 283 | 15 | 58 |
2020年 | 326 | 253 | 21 | 52 |
2021年 | 306 | 213 | 47 | 52 |
2022年 | 279 | 172 | 59 | 56 |
2023年 | 277 | 150 | 49 | 77 |
2024年 | 246 | 142 | 46 | 58 |
当院での無痛分娩満足度調査結果
2021年1月から2022年12月までのアンケート調査をさせていただきました結果です。
アンケート回収率81%(86/106)でした。
非常に満足57% やや満足33% どちらでもない9% やや不満1% 不満0%
当院は、安全を第一、安心得きる無痛分娩をモットーとして30年無痛分娩をおこなっています。産婦さんと赤ちゃんの安全に注意し何か異常が発生すれば素早く対応できるような体制づくりに尽力しています。
産婦人科 副院長 土肥直子
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